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主任司祭より(12月)

 
[人は何のために生きているのか?] 今年も最後の月を迎えました。教会は待降節の準備を経て、救い主イエス・キリストのご降誕をお祝いします。私たちは苦しむ人々・哀しむ人々と共に歩みながら、一緒にクリスマスの喜びを迎えようとしています。大切な時を迎えるためには、心のゆとりが必要かも知れません。私は忙しい時には、そのまま雑事に埋没するよりも、時には童話やお伽話の世界に逃げ込んだりすることがあります。人間として見落としている重大なことを教えてくれるからです。

 ドイツの童話作家ミヒャエル・エンデ著「熊さんと動物たち」には感動しただけでなく、現実に戻るのに時間が掛かりました。この物語は、年とった縫いぐるみの熊さんの話です。新品で買われた頃は、その家の子供たちに遊んでもらっていたのですが、何十年という長い間につぎはぎが増え、洗ってもらう度にすり切れヨレヨレになって来ました。子供たちも大きくなって、もう遊んでくれません。じーと同じ所に座っているのも退屈です。それで、たまには部屋の中を飛び跳ねたりしますが、絶対に誰も見ていない時だけです。或る日、ハエが飛んできて「何のために座っているの?」と聞きます。「ただ座っているだけだよ。しかし、"何のために"と云うことは、そんなに大事なことかい。」「勿論さ。役立たずのおばかさん!誰だって、何かのために生きているんだよ。」熊さんは何のために生きているのか、誰かに教えて貰おうと思って旅に出ます。部屋から庭に出、長い道を通って森に入り、湖や草原を経て砂漠を歩き続け、動物に出会う度に毎回同じ質問をして行きます。"あなたは何のために生きているの?知っていたら教えて欲しい"と。

 答えてくれた動物たちを順番に記すと、@ネズミ―餌を見つけて、家族を養うためさ Aメンドリ―たくさんの卵を産むためよ B小鳥―水浴びをしたりして、遊ぶためよ。周りの言うことなんか気にしないことよ Cミツバチ―せっせと忙しく働くためでしょう D白鳥―(優雅な羽根を拡げながら)いつも美しくあるためだわ Eカッコウ―あるものを数えるため。数量が一番大切だから Fサルの群―グループとか団体とか、組織を作って一緒に何かをするためだ。命令する者、それを聞く者がいて・・・だから自分の立場を知ることが出来るのだ Gゾウの群―それは奥の深い問題で、自分たちも長い間考えているんだ。我々は永遠の魂を持っているので、答えは魂と関係しているかも知れないゾウ Hカメ―(首や手足で体操しながら)健康で長生きするために決まっているじゃないか Iトカゲ―(人生に意味はないさ)何も考えないで、石の上で寝転がっているのが幸せだ。Jハサミムシ―(自分が休める)意心地の良い家を探すため Kヘビ―食うか食われるかの生存競争だ Lチョウチョ―(毛虫からサナギになってチョウに)より良いものへと変化し成長するためでしょう・・・私達も或る時期、或る年代、そして或る人々は動物たちと同じ答え・同じ目的をもって生きているかもしれません。

 しかし、多くの答えは人生の短期的・中期的な目的であって、「人生全体は(短くても長くても)何のためにあるのか?」、「何のために生まれてきたのか?」という疑問には答えていません。この物語の結末は、熊さんが貧しい一人の少女に拾われ可愛がられて、胸のあたりがキューンと暖かくなるところで終わります。熊さんと少女は共に幸せを得たことになります。"愛すること・愛されること"が答えだったのです。「1回の人生は何のためにあるのか? 人間は何のために生まれてきたのか?」・・・クリスマスのお祝いは、私達に真の答えを与えてくれると思います。神の子のご降誕は、神が人間をかぎりなく愛して下さっているという答えではないでしょうか。どんな人間も、神に愛されて生まれてきたのです。永遠の命に救われるために生まれてきたのです。どんな人間も、愛し愛されるために生まれてきたのです。

桜井神父


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