一昔前のこと、スペインの修道女経営の養老院に、当時はまだ高価で貴重なものであったテレビが寄贈された。男性の老人たちはサッカーの試合を見たいと強く希望したので、彼等の休憩室にテレビが置かれた。しかし、女性の老人たちからも、是非テレビを見たいという要望が出された。

　シスターたちは「どうしましょう？」と考えて、「やはり、聖ヨゼフにもう一台のテレビが寄付されるように願うしかないわ」ということになった。そこで、聖ヨゼフがこの願い事を忘れないようにと、玄関にある聖ヨゼフのご像の手の上に玩具のテレビが置かれた（実は、テレビの形をした鉛筆削りの小さな機械でした）。そして、皆さんはそのために祈りを始めました。
　
　さて数日後に、親戚をお見舞いするために、Ａさんというお医者さんが来ましたが、その聖ヨゼフの像を見て、「一体、これは何ですか？」と聞きました。シスターは説明しましたが、彼は大いに笑って、「聖ヨゼフが、テレビを持って来てくれると思いますか？」と言いました。シスターは"勿論！"と言いたかったのですが、黙っていました。

　一週間が経ってから、Ａさんがまた来ましたが、聖ヨゼフの手の上には依然として玩具のテレビが置いてあった。「やはり、聖ヨゼフはダメですね。テレビを持って来ないですよ」と。そして、彼は財布を出して、シスターに５、０００ペセタのお札を渡し、「これで良いものを買って下さい」と言いました。

　シスターはその大きなお金を受け取って感謝したが、Ａさんが姿を消してから、聖ヨゼフのご像の前に跪いて、「聖ヨゼフさま！　いつも私たちの祈りを聞いて下さってありがとうございます。これで、お婆さんたちもきっと喜ぶでしょう。ありがとう！　ありがとう！」と感謝の祈りをしました・・。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ホセ・ヨンパルト神父