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お父さん、お母さん!

 天高く馬肥ゆる秋、灯火親しむ候を迎えました。♪ 秋を愛する人は心深き人・・♪ 信仰を深める秋でもあると思います。また10月には体育の日があり、小学校・中学校などでは運動会も行われます。この夏教会では教会学校と中高生会の3泊4日のキャンプがあり親子共々に多くのことを学んだのですが、これからの複雑多様な世界にあって子供たちが心身すこやかに成長するように祈りたいと思います。

 私は或る時会議の帰りに東京から新神戸まで新幹線に乗ったのですが、隣りで若い会社員と思われる男性が動き出しても窓の外を眺め、ハンカチで涙を拭いていたのです。関西への出張か単身赴任の方のように思われました。出発前プラットフォームまで見送りに来ていた奥様と小学生の男の子、幼稚園児と思われる女の子と楽しく話し合ったり女の子を抱き上げたりしていた父親でした。時間になって車内に乗り込んで来られたのですが、二人の子供たちは外から窓を叩きながら「パパ、パパ!」と叫び続けて泣いているのです。そのうち奥様は子供たちを離れさせ、手を振ってお別れするように教えていました。私は新神戸までの車中、何度かこの方に声をかけようかと考えました。こんな優しく素晴らしいお父さんなので、「神戸で時間があれば、六甲教会にいらっしゃいませんか」と・・。しかし、商売っ気は控えて、ご家族の幸せと子供の成長を心の中で祈っただけでした。このお父さんも、同じことを祈っておられたかも知れません。

 幼い子供にとって、「おとうさん」「おかあさん」(或いは、パパ、ママ)と呼びかけて、「ハイ、ここにいますよ」、「大丈夫ですよ」と答えてくれる人は、この広い世界にたった一人しかいないのです。その言葉のやりとりは、親と子の一体感を心のすみずみにまで浸み通らせていくのです。両親の名前が何であれ、世間的に如何なる立場であれ、子供にとって真実な呼名は「お父さん、お母さん」でしかないのです。その名を持つのは世界中でたった一人の人であり、その呼名は血を分けた親と子を一つにする深い絆を与えていくのです。

 子供はその絆の中で、親の愛が如何に尊いものかを学んでいくのだと思います。誰にとっても、また幾つになっても「お父さーん」「お母さーん」(或いは、父上、母上)と呼ぶ方は永遠に一人だけなのです。天国に行っても、その方は父であり母であると信じています(必ず確かめられる日がやって来るでしょう)。そして、(幸いなことに)優しい優しいお父さんとお母さんになっておられることは間違いありません。子供に信仰心が育っていくのは、家庭で祈っている親の姿を見ることから始まると思います。逆に、「子供が手を合わせて無心に祈る姿ほど美しいものはない」と言われるように、親が子供に教えられる場合もあるでしょう。親と子の絆は愛と信仰によって結ばれていきます。

 或る時のテレビ報道によると、12才の女の子が白血病と闘いながらも、難病や障害をもった子供たちを励ますためにと病床で描いた絵本『一番大切なもの』が彼女の死後出版され、両親によって全国の小児病棟に寄贈されました。闘病の苦しみと死の哀しみを乗り越えた親子の愛がなさしめた偉業だったと思います。この少女は今も天国で「お父さん、お母さん」と呼びながら、いつか会えることを一日千秋の想いで待っているのではないでしょうか。

 桜井神父


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