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図書紹介   「コーラス」   
                                角川文庫
                                クリストフ・バラティエ脚本
                                佐野 晶編訳   

 フランスで上映され、空前のヒットとなった映画「コーラス」の脚本の書である。
よい映画だったと聞き、本を見つけて何度か読み返していたが映画は見られなかった。
最近衛星放送で放映され、やっと見る機会を得た。この本が私をぐいぐいと引き付けるものであった通り、映画もまた心を動かされるものだった。
 第二次大戦が終わったフランス、主人公は大きな夢にやぶれ落ちぶれた中年の音楽教師である。問題児の集まりである寄宿舎学校の舎監になるが、問題児である生徒も、暴君のような校長をも恐れている。そんな彼は自分の作曲した楽譜の入ったファイルを大切に鍵のかかる棚に隠す。その楽譜は自分のおかれている現実から逃避するパスポートのようなものだった。しかし彼は少年たちと合唱団を組織し、みんなの歌声が調和して天使のような歌声を響かせているうちに、問題児だった生徒とも心が通い合うようになる。大切だった楽譜はもう必要ではない。夢は壮大でなくてよい、小さくても心が満たされれば無駄ではない、生徒たちが何よりの希望であり夢であると悟る。
 各地でテロが起こり、戦争は絶えず、国内では親が子を殺し、子が自宅に放火する。このような現代にあって、どうして「コーラス」が感動を呼びヒットしたのだろうか?
 主人公の教師は、教壇の上で明かりを灯したのだった。その灯りは暗闇の教室を照らし、すさんでいた生徒の心を温めた。ヒットの理由は、人の心の本質、神の似姿に創られた人の心を描いたものだからだろう。主人公の生き方は、キリスト者の生き方、また私たちの生き方でもなければならないと思った。
 本では映画のように心をうつ歌声こそは聞こえてこないが、心を静めてこの本を読むなら静かに鳴り響くものを感じだろう。
                                               (大倉本子)

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