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図書紹介 
      「銀のロバ」
                             ソーニャ・ハートネット著
                                    主婦の友社   

 森で、幼い姉妹は倒れている男を見つけます。男は脱走兵で視力を失っており、手には銀色に輝くロバが握られていました。彼が、重病の弟に会いに故国に帰ろうとして来たのを知って、姉妹は何とか助けようとし、普段は口喧嘩ばかりしている兄や、足が悪い為に兵役にもつけなかった若者も協力することなります。

 折にふれ、彼はロバにまつわる話をします。キリスト生誕の時にマリアを助けたベツレヘムの老いたロバや、空に雨乞いをするロバの話。さらに、担架兵と共に多くの傷病兵を救った実話に基づいたロバ。最後は、彼が純銀のロバを持つに至ったいきさつで、話を聞くたびに子供達は、其々なりに、精一杯生きていこうとする意欲をふくらませ、兵士は子供達に出会ったことで希望を得、視力も戻ってきます。末妹が自分で、「希望」を掘り当てる最後の場面が晴れやかです。

 300万人の戦死者が出たと言われる第一次大戦の西部戦線を背景としたこの物語は戦争の残酷さと虚しさを描く一方、命がもつ生き生きとした躍動感を子供や家畜の描写をとおして伝えます。幸運を運んでくれると兵士が「信じる」銀のロバ。華々しく活躍する存在ではなく、無欲に、黙々と重荷を運びながら勇敢な行いを果たしていくロバ。読み終わって、私もロバに乗せてきてもらってきたという思いに行き当たり、胸が熱くなりました。

 「私のロバベンジャミン」(こぐま社)「第八森のこどもたち」(福音館書店)と共に、軍靴の音が聞こえつつある昨今、大切にしたい一冊です。
                                             (塚崎 みち子)

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