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                  「諸聖人・諸死者・諸信徒の繋がり」
                                 J.マシア神父                          

南瓜に蝋燭をつけ、仮面をかぶって遊んでいる子供たちは、日本でもハロウイーンという言葉を知っているようです。昔の英国では冬の始まりに農家の祭りがありました。農民たちは季節の移り変わりに人間の世界と神々の世界の間に行き来することに意味を与え、
祝いしました。
キリスト教ではそれを取り入れました。Halloweenは All Hallows Eveすなわちすべての聖人の前夜という意味です。そして信仰宣言で言う「聖徒の交わり」すなわち、「生者と死者の信徒の繋がり」、キリストとつながっている信仰者の絆、生きている者も死んだ者もみなキリストと結ばれていることを祝い、死者を記念して11月1日と2日に祈るようになりました。ですから諸聖人の祝いと死者の記念と信徒の交わり(諸信徒のつながり)は同じ信仰の表現です。
死者の冥福を祈ることはどんな宗教においても見られますが、私たちは死者のために祈るだけではなく、死者とともに祈り、死者のとりなしを願って自分たちのために祈り、死を超える希望を与えられるように願います。
私たちはおそらく長生きしたいでしょう。一昔前でしたら70歳まで生きることは長生きでした。現代は97歳や100歳まで生きることはめずらしくありません。それでも、おそらく私たちは何歳になっても死にたくない気持ちがあるかもしれません。98歳になっていたある修道女は寝たきりで、もうすこしで息を引き取るときでした。その最後を看取っていたシスターは耳元に言いました。「ご安心ください、天国に行ったら神様が待っていますよ」。そこで、おばあちゃんが答えました。「天国もいいけど、自分のうちほどいいところはありません」。
死ぬことに対して不安を感じても当然です。信仰をもっていても、神様のみ手に自分をゆだねても、死の謎を解くこともできないし、死後の世界を想像することができません。信仰者だからと言って死後の世界を見てきたわけではありません。聖書を紐解いても死後の世界について人間の好奇心に満足させるような説明を期待するわけにもいきません。
聖書では詩的な言葉や象徴的な表現を通してキリストを信じるものの希望が表されています。使徒パウロのコリントの教会への手紙では「さなぎと蝶々」にたとえられるような形で永遠の命への信仰を説いています。
パウロは言います、「年をとるにつれて私たちの『外なる人』は衰えていっても、私たちの『うちなる人』は日々新たにされていきます」。
 「外なる人」、すなわち、私たちの肉体的な命が衰えて行きますが、私たちの「うちなる人」、すなわち、私たちのうちに育ってきた永遠の命、神様の息吹というものは日々新たにされます。言い換えれば、衰えていく私たちの肉体をみれば、年を取るにつれて私たちの人生は下り坂ですが、私たちのうちに成長していく永遠の命を見れば、人生の晩年は登り道です。(「三日月会と私たちが呼んでいる会のことは外国では「登る人生の会」(スペイン語でVida ascendente)と言うのです」。
このことを理屈で説明しようとすると考えが行き詰まってしまいます。なぜかと言えば、死のことは私たちには終わりのように見えてしまうからです。死は終わりではなく始まりであるということはなかなか見えません。
昔の逸話がそれを見事に表しています。母体のうちから分娩を見ることができればどんなふうだろうかということを伝える逸話です。胎児は母親のおなかの中で、九ヶ月の間、成長していきました。そのおなかの中、母親の子宮の中で、その壁あたりの細胞たちは意識があって胎児を見てかわいがっていたというフィクションですけれども、誕生のときが来ました。子宮の壁の細胞たちが看取っているうちに胎児が外へ、どこかへ行ってしまってトンネルの扉がしまりました。細胞たちが別れを惜しんで泣いたそうです。赤ちゃんが死んだと思っていましたが、外は大騒ぎでした。赤ちゃんが生まれたことは、母親をはじめみな喜んでいました。
このように赤ちゃんの誕生は、このたとえ話でもわかるように、母親のおなかの中から見ることができれば死のように見えたでしょう。しかし外から見れば誕生です。生まれるということは胎児にとって新しい命のあり方ですが、そのために分娩という、母親にとっても胎児にとっても、苦しい別れを通して新しい命のあり方がはじまるわけです。誕生が死であれば、死もまた誕生ではないでしょうか。この希望をもたせてくださるキリストを信頼してみ手にゆだねましょう。

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