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図書紹介  『キリスト教美術の源流を訪ねて』
       1 イタリア編   2 地中海編

                                名取四郎著 平凡社(各1800円)  

 著者は芸術史を専門とする立教大学文学部教授で、本書は2005年に亡くなるまで、立教学院『チャペル・ニュース』に連載された記事をまとめた、実質上の遺稿集です。古代から中世にかけてのヨーロッパ史とキリスト教に関する豊富な知識や、それに関連する教会を中心とした建築物や工芸、芸術作品に対する著者の愛着と造詣の深さには、驚きと共に深い感銘を覚えます。
本書は主として、学生を引率して行ったイタリア、地中海沿岸地域の研修旅行記であり、質素な宿に泊まり、宿泊前夜に買っておいたパンをかじり、早朝から徒歩で町中の教会や歴史的建造物を見学して回った旅の記録です。そして、ふんだんに添えられた写真はすべて著者自身が撮影したもので、遠い過去や異国に思いを馳せながら、これらの写真を眺めているだけでも時の過ぎるのを忘れます。
もちろん旅程に関する詳細な記述は読み応えがあるのですが、街角の風物、路地裏の光景のひとつひとつ、教会や修道院の内装・外装に関しても、マニアックともいえる緻密さで描写されています。しかし、それがまったくわずらわしくありません。むしろ、紀行・報告でありながら、著者独特の詩的な表現によって、文学作品の趣さえ感じられ、まるで自分がそのグループの一員となって同じ光や風を感じながら、異郷の町を共に歩いているような臨場感に浸ってしまうのです。
第2巻の<地中海都市編>では、ギリシャ・小アジアからチュニジアまで足を伸ばし、聖書のパウロの書簡などで私達にもなじみある、ガラテア、コリント、エフェソなど地中海沿岸の地が登場します。ここでもその情景が見事に描かれており、本書のおかげで、名前は聞いていても訪れた事もない異国の地が、急に身近なものになりました。キリスト教文化はもちろんのこと、建築や絵画・工芸、そして海外旅行に興味をお持ちの方にはお勧めです。                                                         
                                               (石光)

 

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