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韓国の教会に学ぶ                             柳弘史(助任司祭)

 7月3日から6日にかけて、イエズス会韓国管区の叙階式に出席するため、ソウルを訪れた。この旅のあいだ、教会の関係者と会うたびに必ず一つの同じ質問をすることにしていた。それは「なぜ、韓国のカトリック教会には600万人もの信徒がいるのか。どうして総人口の30%がキリスト教徒になったのか」ということだった。韓国の総人口が4800万人だから、その12.5%がカトリック教徒。さらにプロテスタント教徒が800万人いるから、韓国では総人口の約30%がキリスト教徒ということになる。日本は信徒総数45万人で総人口の0.3%。プロテスタント教会を合わせても1%。同じ漢字文化圏に属するお隣同士でありながら、この違いは一体どこから生まれてきたのか。それを知りたかったのだ。
 何人かの人から返ってきた答えは、日本軍占領期の反日闘争の中でプロテスタント教会が、軍事独裁政権期の民主化闘争の中でカトリック教会が信徒数を拡大したというものだった。日本軍の占領期、プロテスタント教会は、ミッション・スクールを拠点として反日闘争の先頭に立ち続けた。そのために国民の信用を勝ち得、多くの人々がプロテスタント教会に集まったという。カトリック教会は、独立後の軍事独裁政権期に起こった民主化闘争の中で、民主化を求める学生たちの側に立って戦った。軍事政権に追われて明洞大聖堂に逃げ込んだ学生たちを命がけで匿い、武装機動隊の前に立ちはだかって「彼らを逮捕するなら、わたしを殺してからにしろ」と言い放ったキム・スーハン枢機卿はそのようなカトリック教会のシンボルとも言うべき人物だ。
 この説明から、韓国でキリスト教が拡大したのは、日常生活が根底から覆されるほどの社会不安の中で、人々がキリスト教に心の拠り所を見出したからだという答えを出してもいいかもしれない。日本でも戦国時代には、大きな社会不安の中で、宣教師たちの人徳によって信用を勝ち得たキリスト教が人々の心に入り込んで行った。韓国では、日本軍の占領やその後の朝鮮戦争、軍事独裁政権の支配などの中で、戦国時代にも匹敵するほどの社会不安が続き、その中で信仰の実践によって信用を勝ち得たキリスト教が人々の心のよりどころになっていったのだと考えられる。
 わたしたちは、韓国教会のこの歴史から何を学ぶことができるだろうか。日本にも社会不安がないわけではない。年間3万人を超える自殺者、続発するいじめ事件、社会保障制度の崩壊など深刻な問題はいくつもあり、その中で多くの人々が苦しんでいる。もし日本の教会が本当に神の愛を実践したいのなら、一人でも多くの人の魂を神の国へ招きたいのなら、苦しんでいる彼らのもとに出かけて行って信仰の証を立てるべきではないだろうか。苦しんでいる人々の側に立って、「あなたたちの命を守るためなら、自分の命などどうなってもいい」と叫ぶキム・スーハンが日本にも必要ではないか。韓国教会の信徒数に驚き、ため息をつくばかりではなく、わたしたちもできることから何かを始めていきたいと思う。

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